「テカムセの呪い」で倒れていったアメリカ大統領たち

「呪い」は古今東西、様々な国や地域で用いられてきた。

例えば日本でいえば、藁人形を使った方法が比較的ポピュラーだ。 では、日本から飛行機で10時間以上もかかるアメリカではどうなのだろうか。

今回は、アメリカで知られる呪いの1つである「テカムセの呪い」についてご紹介する。

約20年ごとにやってくる呪い

アメリカは建国以来、数多くの大統領が国を支えてきた。

初代大統領であるワシントンや奴隷解放宣言で知られるリンカーンなどは、日本人であっても知っている人が多いだろう。

そんなアメリカの大統領は、なぜか約20年ごとに何らかの死を遂げていることが多いのだ。

このことは「テカムセの呪い」の呪いと呼ばれており、今なおアメリカの都市伝説として多くの人に語り継がれている。

始まりはインディアン部族との戦いから

「テカムセの呪い」とは、1811年に戦死したテカムセというインディアンが行った呪いのことだ。

アメリカは、1622年から1890年まで先住民族であるインディアンとの領土拡張戦争を行っていた。

この戦争はインディアンに対するジェノサイド(国家や大規模な集団による意図的な大量虐殺のこと)としても知られており、初期アメリカにおける闇といえるだろう。

この戦争におけるインディアン部族のリーダーが、約20年ごとにやってくる呪いを行ったテカムセだ。

彼はインディアン部族の1つであるショーニー族の英雄だったものの、1811年にティピカヌーの戦いで戦死。

この際、アメリカ軍を率いてテカムセを殺した人物がウィリアム・ハリソンだ。

彼はティピカヌーの戦いが終わった後、1841に大統領として就任。 しかし、ここから恐るべきインディアンの呪いが始まるのである。

約20年ごとに倒れていく大統領たち

まずウィリアム・ハリソンは、就任してわずか31日後に肺炎で死去。

その後は約20年ごとの周期で、リンカーンやガーフィールド、マッキンリーが暗殺される。

きっちりと20年ごとというわけではないが、それでも一定の間が空いた後に何らかの理由で大統領が倒れていくのだ。 その多くは在職中であるため、当時は政権が混乱していたことだろう。 細かなデータに関しては、以下をチェックしてもらいたい。

大統領名

亡くなった年

死因

関連情報

ウィリアム・ハリソン

1841

肺炎

最も在任期間が短い(31日)

エイブラハム・リンカーン

1865

暗殺

「奴隷解放宣言」で有名

ジェームズ・ガーフィールド

1881

暗殺

2番目に在任期間が短い(約6ヶ月)

ウィリアム・マッキンリー

1901

暗殺

アメリカ市場に金本位制を導入

ウォレン・ハーディング

1923

心臓発作

「狂騒の20年代(※)」における中心的人物

フランクリン・ルーズベルト

1945

脳出血

「ニューディール政策」で有名

ジョン・F・ケネディ

1963年(

暗殺

「キューバ危機」への対応で有名

※狂騒の20年代とは、1920年代に急速な繁栄を遂げたアメリカのこと。この時代にジャズや自動車開発、映画といったものが発展した。

「テカムセの呪い」の終焉

「テカムセの呪い」によって、多くの大統領が倒れていったことは上記のデータを見ることで明らかだ。

ただ、この呪いは1963年で終焉した可能性が高い。 なぜなら、ジョン・F・ケネディの暗殺から約20年後に就任したロナルド・レーガンが「テカムセの呪い」から生き残ったからである。

映画俳優から大統領になった彼は、1981年に暗殺事件に巻き込まれてしまうが未遂に終わる。

さらに20年後の大統領であったジョージ・W・ブッシュには、演説中に手榴弾を投げ込まれたり食事中に失神してしまったりなどの事件があったが、しっかりと大統領としての在任期間を全うした。

このようなことから、もう「テカムセの呪い」は終焉したと言われている。

生き残った2人は偶然か? 「テカムセの呪い」から生き残ったレーガンとブッシュ。

しかし、彼らが生き残ったのは偶然だという声もある。

レーガンの場合は暗殺未遂で終わったものの、弾丸の流れが違っていたり病院が近くに無かったりした場合は亡くなっていただろうと指摘されている。

また、レーガンは1994年にアルツハイマー病を発症。

このことは、「テカムセの呪い」を破った代償ではないかと言われている。

また、レーガンもブッシュもキリスト教団体が呪いを避けるために祈願したおかげで退けられたという声もある。

実はアメリカ大統領選とキリスト教というのは深く関わっており、特にブッシュの支援者にはキリスト教原理主義者が多かったというのは有名な話だ。

このあたりを深く知りたい方は、少し古いドキュメンタリー映画であるが「ジーザス・キャンプ ~アメリカを動かすキリスト教原理主義~」を見てみることをおすすめする。

映画で語られるアメリカの保守的キリスト教の世界観は、宗教との繋がりをそこまで意識しない日本人にとって衝撃的なものに思えるはずだ。

テムカセの呪いが2020年に復活するかもしれない

もし「テカムセの呪い」が終焉していないのであれば、次の周期である2020年に何か起きるかもしれない。

2020年には、アメリカのトップを極める大統領選が待っている。

この記事を書いた201911月現在の情報では、若者から支持が多いバーニー・サンダースや初のアジア系大統領の可能性があるアンドリュー・ヤンなどが立候補。

もちろん、現在の大統領であるドナルド・トランプも再選を目指して立候補している。

既に終焉していると言われる「テカムセの呪い」だが、もしかすると今年何かが起きるかもしれない。

そう考えると、2020年のアメリカ大統領選は目が離せないビッグイベントになるはずだ。

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参考・出典

https://ja.wikipedia.org/wiki/テカムセの呪い(アクセス日20191117日)

https://ja.wikipedia.org/wiki/2020年アメリカ合衆国大統領選挙(アクセス日20191117日)

https://ja.wikipedia.org/wiki/インディアン戦争(アクセス日20191117日)

https://ja.wikipedia.org/wiki/テカムセの戦争(アクセス日20191117日)

https://ja.wikipedia.org/wiki/ウィリアム・ハリソン(アクセス日20191117日)

https://ja.wikipedia.org/wiki/キリスト教根本主義(アクセス日20191117日)

ハイディ・ユーイング、レイチェル・グレーティ監督「ジーザス・キャンプ ~アメリカを動かすキリスト教原理主義~」マグノリア・ピクチャーズ、2006