タイムリープ入門(3)~夢の世界はパラレルワールド?~

前回「夢を使って過去へタイムリープした話」をご紹介したが、今回はそれが本当なら「どんな仕組みで起こったのか?」を考察していく。

ネット上でタイムリープが話題になるきっかけとなった「初代」と呼ばれるタイムリーパーと、その方法をマネして4日前の過去にタイムリープした4日間だけタイムリーパーの予言したが次々と現実になった話に共通するのは、

●特別な装置を使うことなく、夢の中で過去に戻っている。

●戻る前の記憶をもったまま、過去の世界をもう一度やり直している。

●過去の世界は元の世界と少しだけ異なっている。

これに現実的な説明を付ければ「ただの夢」かもしれないが、「ただの夢」ならば4日間だけタイムリーパーの予言に似た出来事がその後に起こったことの説明がつかない。

いや、これも「ただの偶然」と言ってしまえばそれまでだが、その他にこの現象を説明可能な仮説はないだろうか?

過去へのタイムリープを説明する仮説

例えば、

(A)夢を見ている間に現在の体から魂(精神)が抜け出し、過去の世界の自分の体に入って人生をやり直している。

もしくは

(B)夢の中で自分の未来とよく似た世界を体験し、その記憶を持ったまま目覚めた。

う~ん、どちらもオカルトオンラインらしい「トンデモ仮説」だが、特に(B)ならば、夢の中で見た未来と実際にやってきた未来の出来事が、少し違っていた理由にもなる。

しかし、そもそも自分の未来やよく似た世界を見たり体験することはできるのか?

実はわれわれがたまに経験する「デジャブ」という現象が、われわれの世界とよく似た異なる世界、「パラレルワールド」を垣間見たせいかもしれないという可能性を主張する科学者がいる。

日系アメリカ人の理論物理学者、ミチオ・カク博士だ。

カク博士は、この宇宙のすべての力を統一する「万物の理論」の最有力候補とされる「超弦理論」の研究者だ。
科学の普及活動にも熱心で、サイエンス系のテレビ番組に解説者として出演したり、数式を使わずわかりやすく最新の物理学を説明した本も書いている。

created by Rinker
¥1,531 (2020/11/25 17:29:05時点 Amazon調べ-詳細)

さっそくカク博士の主張を考察していく。

デジャブとは?

まず「デジャブ」とは、「はじめて体験する出来事なのに、以前どこかで経験したことがある」と感じたり、「はじめて訪れた場所なのに、前に来たことがある」と感じる既視感覚のことだ。

「このシーンは以前夢で見たことがあるぞ!」という不思議な感覚を私も小学生の頃に感じたことがあるが、米テキサスA&M大学の調査によると、約70%の人が人生で一度はデジャブを経験しているという、わりとありふれた現象だ。

この調査を主導したテキサスA&M大学のミシェル・ホック助教授によれば、脳の情報処理におけるタイムラグによって、現在の体験の一部を過去の体験と感じてしまう「脳の錯覚」がその原因だという。

これに対し、カク博士はまったく違うアプローチからデジャブを説明する。

カク博士によると「デジャブは周波数のエラーによって、パラレルワールドを垣間見たせい」というのだ。

パラレルワールドとは?

「パラレルワールド」「並行宇宙」とも呼ばれ、われわれが今住んでいる宇宙とは別に、並行して存在する宇宙のことだ。

われわれの宇宙と物理法則がまったく異なる並行宇宙もあれば、地球が存在し、われわれと瓜二つの人間が生活する並行宇宙もある。

例えば、そのよく似た宇宙が時系列的にわれわれの宇宙より少しだけ未来の時間を進んでいるならば、その並行宇宙を垣間見ることができれば、われわれの世界の未来を知ったことになる。
※まったく同じ宇宙ではないので、あくまで確率的に実現する可能性の高い未来だが。

冒頭で「夢の中でタイムリープした話」を説明するために2つの仮説を立てたが、人生をやり直すために「過去へタイムリープ」したいのならば、

(B)夢の中で自分の未来とよく似た世界を体験し、その記憶を持ったまま目覚めた。

について、

(1)パラレルワールドが存在し、それに干渉できると仮定し、
 ↓
(2)夢の中で未来のパラレルワールドを自分の意思で見ることができ、
 ↓
(3)その記憶をもったまま過去の(現実の)世界で目覚めることができれば、

将来起こる出来事に対処しながら行動していけるので、過去にタイムリープして人生をやり直すのとほぼ同じ意味になる。

そこで(1)「パラレルワールドが存在する可能性」から探っていこう。

パラレルワールドというアイデアはどこから生まれた?

電子や陽子や中性子といったミクロの世界を研究する学問を「量子力学」という。

量子力学の世界では、マクロの世界では起こらないさまざまな奇妙な現象が起こる。

その1つが「量子は、粒子と波の2つの性質をもつ」ことだ。

量子は普段はのように空間に重なり合って広がっており場所を特定できないが、観測されたとたんに粒子として1箇所に特定される。

のような量子がどのように粒子として特定されるかはいくつかの解釈があるが、主流は、観測した瞬間に波として広がっていた量子が1点に収縮するという「コペンハーゲン解釈」だ。

コペンハーゲン解釈のイメージ
コペンハーゲン解釈のイメージ

これに対し最近支持を広げているのが「多世界解釈」だ。

 

多世界解釈によるパラレルワールド

「多世界解釈」では、重なりあって広がったさまざまな可能性として考える。「コペンハーゲン解釈」とは異なり、この可能性は観測されても収縮することなく、そのままずっと残る。

観測者は「ある方程式」によって選択されたいずれかの可能性(世界)の中に属していく。

多世界解釈のイメージ
多世界解釈のイメージ

「多世界解釈」はその名前のせいか、観測するたびに世界が分裂していくイメージでよく説明されるが、考案者のエヴェレット本来のアイデアは、宇宙という1つの器の中にたくさんの可能性がもともと詰まっていて、方程式によってその1つが選択されるというものだ。

このさまざまな可能性(世界)がやがて「さまざまな宇宙」という「パラレルワールド(並行宇宙)」のアイデアに発展していった。

さて先ほど「ある方程式」がわれわれの運命を決めると説明したが、これは「シュレーディンガー方程式」と呼ばれる。
この方程式を考えたシュレーディンガー猫を使った実験で知られている。

シュレーディンガーの猫

シュレーディンガーの猫とシュレーディンガー方程式
シュレーディンガーの猫とシュレーディンガー方程式

中の見えない箱に1匹のと放射性物質、そして放射性物質が崩壊したら毒ガスが発生する装置を入れる。

放射性物質が崩壊すると中の猫は毒ガスによって死んでしまうが、放射性物質がいつ崩壊するかは確率的にしかわからないので、外からは猫が生きているのか死んでいるのかわからない。

つまり中の猫は箱を開けて確かめるまで、生死が重なった状態といえる。

多世界解釈では箱の中の猫は死んでいる状態下図の青)と生きている状態下図の赤)が重なったまま、シュレーディンガー方程式によってわれわれがどちらかの世界に属していく。

多世界解釈でのシュレディンガーの猫
多世界解釈でのシュレディンガーの猫

シュレーディンガーは猫が嫌いでこんな残酷な実験を思いついたのではない(思考実験なので、あくまで想像上の実験だ)。

ミクロ世界の現象(放射性物質の崩壊)をマクロ世界の問題(猫の生死)として説明したのだ。

さて、パラレルワールドにはエヴェレットの多世界解釈によって生まれる並行宇宙の他に、宇宙初期に起こったインフレーションによって生まれるマルチバース(多元宇宙)もある。

 

インフレーションによるマルチバース

宇宙のはじまりには真空の相転移が起こり急速膨張したという「インフレーション理論」が考えられているが、このインフレーションによって局所的にいたるところに泡宇宙が生み出される。

インフレーションで宇宙が膨張するイメージは、沸騰するお湯の泡に近い。

泡と泡の間にある空間は、泡自体が膨らむ速度よりも速く広がる。

泡同士がぶつかれば、そのエネルギーがビッグバンを引き起こす引き金になるが、泡自体が膨らむスピードよりもその間の空間がひきのばされるスピードの方が速いと、いつまでたってもインフレーションがとまらない。

この永遠に続くインフレーションを「永久インフレーション」と呼ぶ。

永久インフレーションのイメージ
永久インフレーション

沸騰するお湯の泡ならぶつかってはじけて消えてしまうこともあるが、永久インフレーションで誕生する泡宇宙は無限に増えていく。

この増殖する宇宙が「マルチバース(多元宇宙)」となる

この他にカク博士が専門の「超弦理論」によって生み出される並行宇宙もある。

 

超弦理論によるパラレルワールド

「超弦理論」とは物質の最小単位を粒子のような「点」ではなく、1本の振動する「ひも」と考える。このひもの振動する周波数の違いが世の中に存在する光子などのさまざまな素粒子に対応するという理論だ。

超弦理論によればこの宇宙は3次元空間ではなく、9次元空間(時間を加えると10次元時空)であり、3次元空間以外の6次元余剰次元として小さく巻き込まれている。
※われわれは3次元しか認識できないのでこの「余剰次元」を観察することはできない。

この超弦理論は考え方の違いにより5つのタイプがあるが、さらに1次元の膜(ブレーン)を加えて11次元にすると統一できる可能性が示された。

さて「ひも」には「閉じたひも」「開いたひも」の2種類があり、この宇宙に存在する4つの力のうち「開いたひも」は「電磁力強い力(原子核を結びつける力)・弱い力(原子核を他の原子に変える力)」に、「閉じたひも」「重力」に相当する。

「閉じたひも」は次元の間を自由に移動できるが、「開いたひも」ブレーンに両端がくっついており離れることができない。

重力だけが他の力と違って次元を自由に移動できる。

超弦理論の「開いたひも」と「閉じたひも」
超弦理論の「開いたひも」と「閉じたひも」

われわれはこの1枚の膜の中(ブレーンワールド)に住んでいるとされる。そしてわれわれには認識できない余剰次元の中をブレーンが漂っている。

余剰次元にはわれわれのブレーン以外にもさまざまなブレーンワールドが存在し、その1つ1つが並行宇宙である。

その中にはブレーンとブレーンの距離が(けっして認識はできないが)ごく近くにあり、唯一余剰次元の間を移動できる「重力」によって相互作用する可能性がある。

カク博士「デジャブは周波数のエラーによって、パラレルワールドを垣間見たせい」というのは、量子状態にある物質が何らかの要因で現在の世界の波動状態(周波数)が弱まり、重力の相互作用によって他のブレーンに干渉した結果だと説明できる。

したがって、(1)「パラレルワールドが存在し、そこに干渉できる可能性が高い」のは、この「ブレーンワールド」だろう。

次回は、(2)夢の中で未来のパラレルワールドを自分の意思で見るために「夢をコントロールする方法」を考察していく。