時代を超越した映画監督「キューブリック」の完璧主義的逸話と作品の凄さを語る。

これまでの映画監督で最高の1人を挙げるなら?

この質問に対し、必ず候補に入る映画監督「スタンリー・キューブリック」。

スタンリー・キューブリック
出典:Stanley Kubrick (1928–1999)

映画好きでも、

  • 作風のとっつきにくさ
  • 説明不足すぎて不親切な内容
  • 作品自体が古く手を出しにくいこと

などなどから、

キューブリック映画を観るきっかけが無い。

とも、

観たけど意味不明。

とも言われがち。

かくいう私も、最初はそうでした(笑)。

ですが、

なんか凄い監督!

というイメージは、なんとな~くお持ちではないでしょうか?

でも、何が凄いか分からない……。

それでは、お教えしましょう。

スタンリー・キューブリック監督の、類まれなる「逸話」と「凄さ」について。。

スタンリー・キューブリック監督の「完璧主義」ぶりが凄まじい。

スタンリー・キューブリック

キューブリックは、病的なほどの完璧主義者でした。

監督としての仕事だけでなく、

  • 脚本
  • 撮影
  • 編集

といった映画製作過程のすべてを自分一人でこなす、こなさないと気が済まない人物でした。

そして、それらすべてをコントロールできる知識とスキルを、キューブリック監督は持っていたようです。

完璧主義エピソード1:ギネスブックに載るほどの、テイク数。

完璧主義ゆえに、納得できるまで何テイクも撮影し続けるのが、キューブリック監督の撮影スタイル。

ギネスブックに載ったテイク数は、ホラー映画『シャイニング』撮影時の、132回!!

132回「アクション!」と「カット!」を繰り返すほどに、とにかく納得できるまで撮影し続ける監督でした。

ちなみに、この撮影はさほど重要なシーンでなかったうえ、結局本編に使われなかったそうです…こだわりが凄すぎる……。

キューブリック監督いわく、

撮影時間があるのだから、時間の許す限り撮影しなければもったいないではないか。

とのこと!

まァ、一理あります。

一理ありますが、なんでもないシーンに132テイクも撮影を繰り返すのは、映画に対する異常な愛情を感じずにはいられません…。

完璧主義エピソード2:ギネスブックに載るほどの、撮影日数。

通常、映画製作時に俳優やシーンを撮影する日数は、90日~120日ほど。

撮影以外は、

  • プリ・プロダクション(脚本作り、俳優・スタッフ集め等)
  • ポスト・プロダクション(編集、音楽や効果音の合成等)

と呼ばれる撮影前後の期間がほとんどを占めます。

さて、キューブリック監督が図らずもギネスブックに載せた撮影日数はというと……、

トム・クルーズ主演『アイズ・ワイド・シャット』の、約400日(休暇含む)。

休暇を入れたとはいえ、撮影に1年以上費やす映画は、普通あり得ません。

自主制作ならともかく、商業映画においては今後一作品も現れないであろう、あり得ないレベルの出来事です。

完璧主義エピソード3:映画完成後も、完璧な形で上映させようとする。

彼の完璧主義は、作品内に留まりません。

作品外の、たとえば、

  • 上映方法
  • 上映場所や環境
  • 正しく翻訳されているか?

といった部分にも、最大限の力を注いだといわれています。

1964年『博士の異常な愛情』以降の作品は、日本語訳の再英訳を校閲するという徹底した監修を行っていました。

それほどに、自身の作品を完璧な形で見てもらいたかった、ということですね。

キューブリックは、類まれなる開拓者。

スタンリー・キューブリック

キューブリック監督を一言で表すなら、「開拓者」。

キューブリック監督が手がけた作品は、

  • SF映画(2001年宇宙の旅)
  • ホラー映画(シャイニング)
  • 戦争映画(フルメタル・ジャケット)

などなど、ジャンルがバラバラで一定していません。

しいて挙げるなら、立て続けに公開された、

  1. 博士の異常な愛情(1964年)
  2. 2001年宇宙の旅(1968年)
  3. 時計じかけのオレンジ(1971年)

これらが「SF三部作」と呼ばれることから、SF映画のイメージがある人は少なくないはず。

ただし、

だからSFが一番得意。

とも、

手がけていないジャンルは苦手。

ということも言えないのです。

キューブリックの作品には、どれも『そのジャンルのイメージをガラッと変える』ほどの革命が起こっているのです。

究極の視覚表現に挑んだ、2001年宇宙の旅

スタンリー・キューブリック
出典:2001: A Space Odyssey
  • 人類の誕生と、さらなる進化
  • 地球外生命体との遭遇、人間との関係性

という宇宙規模の哲学的なテーマを取り上げておきながら、作中のセリフや説明はほぼ無し。

SF超大作映画でありながら「視覚情報から物語を感じ、体感してほしい。」という、究極の視覚表現に挑んだ野心的な作品でもあったのです。

今の映画を見慣れているほど、『2001年~』は圧倒的に不親切で理不尽で、意味不明な作品です(笑)。

「人間こそ最も恐ろしい」ことを初めて世に知らしめた、シャイニング

スタンリー・キューブリック
出典:The Shining

原作者を未だに怒らせるほどのストーリー改変と、それに反する大ヒットを記録した映画『シャイニング』。

当時は『エクソシスト』のような超常現象系のホラー映画が主流でしたが、『シャイニング』は、

人間こそ最も恐ろしい。

ということを突き詰め、それまでのホラー映画の流れを変えてしまった作品なのです。

映画が原因で殺人事件が起こってしまった、時計じかけのオレンジ

スタンリー・キューブリック
出典:A Clockwork Orange

あまりにもエグすぎる性的・暴力的表現を映しながら、商業的・評判ともに大成功を収めた『時計じかけのオレンジ』。

公開直後(1972年)のイギリスでは、『時計じかけのオレンジ』が原因で殺人事件が起こった」として、上映が一切禁じられました。

キューブリック監督が亡くなった1999年になりようやく再上映が実現したほど、人や社会に(悪)影響を与えた映画でした。

もうこんな監督は決して現れない。

大人数の俳優とスタッフを集めて、製作期間をできるだけ短縮して費用を抑えて、監督以上にプロデューサーが権限を持つ今の映画界では、彼のような監督はまず現れません。

時代が生んだ類まれなる映画監督でありながら、時代を超越し続けた天才監督が、スタンリー・キューブリックなのです。

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