ヒグマに襲われた大学生の悲劇…福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件

ヒグマに襲われた村の壮絶な話「三毛別羆事件」もオカルトオンラインでご紹介しましたが、ヒグマに襲われた事件は実はまだまだあるんです。

三毛別村羆事件の場合、穴持たずという冬眠できなかったクマが食糧を求めて村に降りてきてしまって人を食べるようになったという事件でした。これもなかなか血なまぐさいのですが、この場合、クマもまた生きるために人を襲ったという側面もあります。ですが、ヒグマは食べる目的ではなく人を襲うことがあるんです。

ある大学生を襲ったヒグマの執着心が解る事件をご紹介します。。。

 

福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件

 

福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件は昭和45年に起きたヒグマに人が襲われたという事件です。場所は北海道の日高山脈にある”カムイエクウチカウシ山”という 1979 mの山で日本二百名山のひとつにも数えられるとても美しい山です。

ここを訪れた福岡大学ワンダーフォーゲル部(当時は同好会だったそう)のメンバーがヒグマに襲われるのです。

 

被害にあったグループは5人

ヒグマに襲われたワンダーフォーゲル部のメンバーは全員で5人。すべて男性で日高山脈を縦断する計画だったそうです。

彼らは最初は計画通りに順調に工程をこなしていました。そして、ちょうど中間地点になる八の沢カールというところでキャンプをはります。するとこのキャンプ場に一頭のメスのヒグマがあらわれるのです。ヒグマは荷物を漁ったそうですが、彼らはヒグマを威嚇して追い返し、夜を徹てして見張りを立てて一晩を過ごしました。福岡大学ワンダーフォーゲル部のメンバーはヒグマが生息していない地域から来たこともあって、ヒグマに対する恐怖心が少なかったのでしょう。

そして、翌朝早くにヒグマがテントを攻撃してきます。このときテントが、ヒグマに倒されてこぶし大の穴をあけられたそう。そして、メンバーのうち2名が助けを求めるために下山しました。そして、その道中に、北海学園大学や鳥取大学のグループと遭遇し救助要請をしてからまたメンバーもとに戻り昼頃に合流して、テントを修繕します。ですが、テントの周辺をヒグマが徘徊していたため荷物だけを取り返して、鳥取大学のテントに避難するべく、八の沢カールを徒歩で歩き出します。ですが、北海学園大学も鳥取大学もヒグマの一報を聞いてすでに下山していたのです。

彼らは歩いて逃げようとするのですが、ここでまたヒグマが追いかけてきたのです。そして、逃げ惑うメンバーを襲います。そして、ヒグマに追いつかれてしまった1名がここで絶命します。最後に「ちくしょう」と叫んだのを残ったメンバーが聞いていたそう。

そして、逃げるときに一人だけはぐれてしまったメンバーは鳥取大学が置いていったテントに逃げ込みます。ですが、このテントもヒグマに襲われて、彼もまた絶命してしまいます。そして、このはぐれたメンバーは絶命する直前までメモを残していました。

その内容が公開されています。

15㎝くらいの石を鼻を目がけて投げる。当った。クマは後さがりする。腰をおろして、オレをにらんでいた。オレはもう食われてしまうと思って…一目散に、逃げることを決め逃げる

 

7/27日 午前4時

目が覚める。
外のことが、気になるが、恐ろしいので、8時までテントの中にいることにする。
テントの中を見まわすと、キャンパンがあったので中を見ると、御飯があった。
これで少しホッとする。上の方は、ガスがかかっているので、少し気持悪い。
もう5:20である。
また、クマが出そうな予感がするので、またシュラフにもぐり込む。
ああ、早く博多に帰りたい

 

7/27日 午前7時 

沢を下ることにする。
にぎりめしをつくって、テントの中にあったシャツやクツ下をかりる。
テントを出て見ると、5m上に、やはりクマがいた。
とても出られないので、このままテントの中にいる。

 

7/27日

3:00頃まで・・・・(判読不能)しかし・・・・・(判別不能)を、通らない。
他のメンバーは、もう下山したのか。鳥取大WVは連絡してくれたのか。いつ、助けに来るのか。すべて、不安でおそろしい・・。またガスが濃くなって・・・・

引用 ヒグマ事件を読み解く

このメモを書いた後、ヒグマはこのテントを襲っています。

そして、残った3人は必死に逃げます。ですが、ヒグマはそんな彼らも執拗に追い回します。時速50キロものスピードで走ることができるヒグマにとって、逃げ惑う人間に追いつくことは難しいことではありませんでした。

そして、ヒグマは3人を見つけます。そして、ここでリーダーだったメンバーが自らヒグマに突っ込んでターゲットになり、あとの2人を逃がします。逃げ伸びた2人はそのまま下山して五の沢砂防ダムの工事現場にたどり着いて何を逃れることとなりました。

この事件では3人の大学生がヒグマに襲われてなくなりました。

後で遺体が回収されたのですが、突起物がはぎとられていたり、内臓が飛び出していたりとひどい状態だったそうです。

参考資料 北の山脈編集部編纂 「福岡大学ワンダーフォーゲル部遭難報告書抜粋」

            木村盛武 第9章 事件をかえりみる「福岡大学ワンゲル部員日高山系遭難事件」

 

ヒグマが大学生をターゲットにした理由

2人が下山したあと、救助隊が結成されヒグマは射殺されました。3歳の雌のヒグマでそれほど大きな個体ではなかったそうです。

そして、解剖されたのですがこのヒグマの胃から人間はでて来なかったんです。つまり、襲ったけど食べてない…三毛別村羆事件ではヒグマは確実に人を食べていたそうですが…。つまり、ヒグマは自らが生き延びるために人を襲ったのではなかったということになります。

ヒグマはとても執着心が強く一度自分が手にしたものはどんなものでも自分のものだと認識するそうです。

大学生がヒグマをテントから追い出したり、荷物を取り返したりしたことでヒグマは彼らを「自分の獲物を横取りした敵」と認識し、それで執拗に追いかけて襲ってきたのではないかと言われています。

また、ヒグマは走って逃げるものを追いかける習性もあるんだとか…つまり、一目散に逃げたのもヒグマから追いかけられる要因だったという事になります。

参考資料 木村盛武「第9章 事件をかえりみる「福岡大学ワンゲル部員日高山系遭難事件」

まとめ

ヒグマは日本では北海道に生息している野生動物です。恐ろしい習性と身体能力を持っているヒグマ…山中で一度ターゲットにされたら逃げ伸びるのが困難になることは言うまでもありません。

一人でテントに逃れた大学生は、どんな気持ちで夜を明かしたのでしょうか。。。

ちなみにこの大学生を襲ったヒグマは剥製にされて、中札内村にある”日高山脈山岳センター”というところに展示されています。

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