【未解決事件】『四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件』を徹底解説 -1- 【実録シリーズ】

“濡れ衣を着せられた上に殺された”

窃盗容疑―。
一切、身に覚えのない無実の人に降りかかった悲劇。

誤認逮捕の末の致死―。
正当化された警察の不祥事。


本記事筆者 テンペ・ワゾウスキによる【実録シリーズ】第4弾。今回もまた、未解決事件を徹底解説していきます。

『四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件』の概要

2004年(平成16年)2月17日。事件の舞台となったのは、三重県四日市(よっかいち)市にある「ジャスコ四日市尾平(おびら)ショッピングセンター」(現 イオン)。

このショッピングセンター内にあるATMコーナーで他の利用者の財布を盗んだとして、窃盗の疑いをかけられた男性(当時68歳)が買い物客3人や警備員らによってその場に取り押さえられた。
この男性が窃盗容疑をかけられたのは、このときATMコーナーにいた若い女の”財布を盗られた”という訴えによるもの。この女は2歳くらいの幼児を抱いた母親らしき人物だった。

取り押さえられた男性は現場に到着した警察官に逮捕され、連行された。そしてこの男性はその後まもなくして死亡。死因は高血圧性の心不全と不整脈によるものであったが、これらは高度のストレスに起因するものであったといわれている。
男性の死亡を受け、三重県警察は翌18日、「被疑者死亡」のまま男性を書類送検。

しかしながら、翌月3月にこれが誤認逮捕であることが明らかになる―。

この事件の別称

『四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件』。これは本事件の正式名称であるが、通称「ハムスターおじさん事件」などとも呼ばれている(その理由は後に明らかに)。

ちなみに事件の舞台となった「四日市ジャスコ」は当時、地元の人たちに「オビジャ(=”おびらのジャスコ”)」と呼ばれていた。

事件解説

本事件はいわゆる「誤認逮捕および冤罪事件」である。誤認逮捕もさることながら、その後すぐに被害男性が死亡したということで、警察としてはその威信を揺るがす非常に具合の悪い事件となってしまった。

先述のとおり、事件の翌月に死亡した男性の無実が発覚したわけである。
これは事件発生時に女と男性が奪い合っていた財布が、死亡した男性のものであったことが判明したことによる。つまり、この事件の犯人は”財布を盗られた”と訴え、騒ぎを起こしたこの女である。

同年5月、津地方検察庁は死亡男性の無実を認めることになる。これと同時に警察は女を虚偽告訴罪の容疑者として捜査を開始。女の行方を追った。

事件発生からちょうど1年後の2005年2月17日、三重県警察は容疑者である女の姿を捉えた防犯カメラ映像の”画像”を一般に公開した。正確にいえば、この時点で女の容疑は特定できていなかったが、事態を重くみた警察は画像の公開に踏み切る決断をした―。

容疑事実が未特定のまま防犯カメラ映像(画像)を公開

本事件で行われたこの措置は異例。これはそれだけ警察がこの事件の解決に向けて尽力して取り組んだということである。この事件で警察は自らその面子(めんつ)を潰してしまっているため、威信回復のため事件解決に躍起になった結果であるといえる。
ちなみに、本事件のほかにもう1件だけ同じ措置を講じた事件がある。それは「グリコ・森永事件」である。これは「警察庁広域重要指定事件」における初の未解決事件。いわば警察もお手上げの「完全犯罪」であり、時効を迎えた一連の事件の総称。

「警察庁広域重要指定事件」・・・日本全国の警察機構が協力体制を取って捜査にあたることを指定された事件のこと。要するに”重大事件”である。


【パート1】はここまで。【パート2】へ続く。