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02月04日12時50分

ニュースで気になるあの法律⑬

有名女性タレントの上半身写真に、胸のイラストを合成したものを掲載したとして、雑誌社に対して慰謝料を支払うよう命じる判決が出されました。この判決は、「人格権」に基づいて慰謝料を認容したようですが、この「人格権」とはどのような権利でしょうか。

「人格権」を明記した法律はない

 「人格権」という言葉を聞いたことがある人は少なくないと思います。ただ、実は「人格権」という権利を明記した法律はありません。なお、「著作権法」という法律には、「著作者人格権」という権利が規定されていますが、「人格権」とは違う権利です。
 それでは、この「人格権」というのは、どこから出てきた権利なのでしょうか。

憲法で保障された基本的人権

 日本国憲法は、基本的人権を保障している国家の最高法規ですが、その第13条は次のように規定しています。
「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
そして、「人格権」は、この幸福を追求する権利の一つと考えられています。
そもそも「人格権」とは、一人一人が人格的に生きていくことを保障する権利です。具体的には、名誉権やプライバシー権なども「人格権」に含まれます。
今回のケースでは、写真をいわゆる“アイコラ”に利用したことで、そのタレントに対し、強い羞恥心や不快感を抱かせ、自尊心を傷つけたとして、「人格権」の侵害であると判断されました。
 ちなみに、これまで、今回のケース以外にも「人格権」について判断されたケースがあります。例えば、昨年、福井地方裁判所で、原子力発電の再稼働に対する差し止めが認められたという事件がありましたが、これは「人格権」に基づいて、原子力発電の再稼働の差し止めが認められているのです。

法律で明記されていなくても、保障されるべき権利がある

 現代の社会では、あらゆる権利を法律で明記しておくことはほぼ不可能です。とはいえ、人権が侵害されているにもかかわらず、これを放置しておくことは、社会的に見ても許されるべきではない、というときにこういった「人格権」に基づく保障が図られるというわけです。その意味で、「人格権」は様々な権利を幅広くカバーするものといえるでしょう。
 ただし、どんな権利でも保障してもらえるというわけではありません、あくまでも、社会の常識に適ったものでなければならないのです。今回のケースで、裁判所は、勝手に写真を利用されたタレントの自尊心が傷つけられたと指摘しています。自尊心が傷つけられることは、誰にとっても許しがたいものですので、慰謝料の支払いを命じる判決が出されたのでしょう。

このコラムの担当は

ニュースで気になるあの法律⑬
弁護士 矢吹保博
民事事件・家事事件・刑事事件など幅広く多様な事件を取り扱う傍ら、「株主の権利弁護団」に所属し、カルテル事件などに関する株主代表訴訟なども取り扱う。

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