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11月26日12時50分

ニュースで気になるあの法律⑤

「裁判所は、求刑を上回る、懲役○○年の判決を言い渡した」というニュースを聞いたことはありませんか。このように、検察官の求刑を上回る懲役を科すことは、許されるのでしょうか。

実は、「求刑」は必要ない

 何かの罪を犯したとして起訴された人を、「被告人」と言います。そして、被告人の罪について判断する裁判を「刑事裁判」と言いますが、刑事裁判の手続きは、「刑事訴訟法」という法律に従って進められます。
 この刑事訴訟法で、「求刑」という用語は出てきません。つまり、刑事訴訟法という法律上、実は、求刑は必要とされていないのです。このため、検察官が求刑を行わなかったとしても、何ら問題はありません。

求刑は、検察官の意見に過ぎない

 とはいえ、刑事裁判において、検察官が求刑を行わないことは、まずありません。
 では、この求刑とは、一体どういう意味があるのでしょうか。
 結論から申し上げますと、求刑とは、検察官が述べる意見に過ぎません。要するに、「検察官としましては、様々な事情を考慮すると、被告人には懲役○○年が妥当であると思います。」という意見を述べているだけなのです。

裁判所は、検察官の求刑には拘束されない

 このように、求刑が検察官の意見に過ぎないということになれば、裁判所がそれに従わなければならないことはありません。裁判所は、検察官や弁護人の意見を、参考にすることはありますが、それに従う必要などないのです。
 ですので、裁判所は、独自の判断に従って、求刑を下回る判決を言い渡すことはもちろん、求刑を上回る判決を言い渡すこともできるのです。

求刑を参考にする

 もっとも、求刑が単に検察官の意見であったとしても、それは、その事件を担当している検察官の独断と偏見に基づくものではありません。不当・不公平に重いもしくは軽い判決にならないよう、これまでの裁判例を参考にして、検察官として、妥当な刑罰を検討して導き出した意見です。このため、裁判所も、検察官の求刑を十分に尊重し、求刑を踏まえた判決を言い渡すことが多いのです。

 

処罰感情に応えるため

つまり、求刑を上回る判決を言い渡すときは、検察官の求刑どおり、もしくはそれ以下の懲役にしてしまうと、国民の処罰感情に応えられないと判断して導いた結論だと言えます。もっとも、このような判決をするときは、不公平な判決にならないよう、十分な理由付けが必要でしょう。

このコラムの担当は

ニュースで気になるあの法律⑤
弁護士 矢吹保博
民事事件・家事事件・刑事事件など幅広く多様な事件を取り扱う傍ら、「株主の権利弁護団」に所属し、カルテル事件などに関する株主代表訴訟なども取り扱う。

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