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10月29日12時50分

ニュースで気になるあの法律①

先日、大学生が「イスラム国」という組織に参加しようとしたとして、「私戦予備・陰謀罪」により事情聴取を受けたというニュースが報道されました。「私戦予備・陰謀罪」という聞き慣れない犯罪ですが、これは一体どのような罪なのでしょうか。

「刑法」という法律に規定されている罪

どのような行為が犯罪になり、どのような刑罰を受けるか等について規定している、最も基本的な法律は、「刑法」という法律です。以前に連載した「軽犯罪法」などは、この刑法から派生した法律です。
この刑法に、「私戦予備・陰謀罪」という規定があります。

刑法第93条

外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者は、三月以上五年以下の禁錮に処する。ただし、自首した者は、その刑を免除する。

「私的に」と規定されていますので、国に命令された場合は成立しません。また、戦闘行為の目的で「予備又は陰謀」をしたことを処罰する規定です。意外にも、戦闘行為そのものを処罰する規定はありません。また、暴行や脅迫ではなく「戦闘行為」と規定されている以上、単に公務執行妨害罪が成立するような暴行・脅迫というレベルで成立せず、何らかの組織による武力をもった攻撃が想定されているでしょう。
刑罰については、三月以上五年以下の「禁錮」とされており、懲役ではありません。懲役の場合は刑務作業に従事しなければなりませんが、禁錮は刑務作業をしなくてもよいのです。ただし、犯罪であることに違いはありません。

この規定で摘発された初めてのケース

今回のニュースで、事情聴取を受けた大学生がどこまでの行為に及んでいたかは分かりませんが、陰謀を企てただけで犯罪になってしまいます。この規定で摘発されたのは、今回が初めてのケースではないかと思います。
この大学生が具体的に何をしていたのか、今後の報道にも注目していきたいと思います。

 

 

「ニュースで報道されているけれど、どういった法律なのかよく分からない」という経験をしたことは少なくないと思います。今回からは、ニュースで報道された“気になるあの法律”についてお話ししていこうと思います。

このコラムの担当は

ニュースで気になるあの法律①
弁護士 矢吹保博
民事事件・家事事件・刑事事件など幅広く多様な事件を取り扱う傍ら、「株主の権利弁護団」に所属し、カルテル事件などに関する株主代表訴訟なども取り扱う。

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